<1929年の大恐慌でシミュレーション>積立投資の有効性を検証してみました

投資戦略

「積立投資って本当に有効なんだろうか・・・?」

「過去20年間のデータでは積立投資は有効だったらしいけど、だからって今後も有効だとは言えないよね」

「この未曾有のバブル状況で積立投資始めても大丈夫なのかな・・・?」

皆さんこのように思ったことはないでしょうか。

私はあります。
特に、積立投資の有効性を謳っているデータのほとんどが、大体せいぜいITバブル崩壊以降の相場での例を使っているものが多く、「じゃあその前はどうだったの?」と心配になります。

とりわけ私は2019年度から積立投資を始めた、いわゆる「つみたてNISA」世代なので、現状のバブル相場とその後にくるであろう暗黒時代が恐ろしくして仕方がありません。
はっきり言って「過去のデータで有効性が示せているから、今後も有効である」というのは非論理的だと思っています。

しかし、せめて過去最悪の世界大恐慌時のデータで積立投資の有効性が示せるならば、少しは心落ち着くのかも・・・と思い、今回シミュレーションをしてみました。

大恐慌時のダウ平均の値動きおさらい

以下は、大恐慌前のバブル開始~大恐慌の回復までの期間のチャートです。(クリックで拡大します)

1929年8月に高値をつけたあと、約3年かけて底を打ったようです。
そして、1954年12月まで高値を更新できませんでした。
3年間のなぶり殺しもエグいですし、高値更新まで約25年を要しています

そして一番衝撃的なのはその下落率です。なんと高値から 89% 下落したようです。

現代社会ではこんな無茶苦茶な大暴落は起き得ないと言われていますが、今のコロナバブルを見ていると起き得ないことが起きているので、ある程度の覚悟は必要なのかなと思っています。

シミュレーションの条件等について

ご注意

自分なりに正確性に気を配りながらシミュレーションをしていますが、あくまで個人レベルの検証なので、正確性は保証できません。
特にシミュレーションするにあたり自作のスクリプトを使用しているため、バグが存在する可能性も十分にありますので、あくまで参考程度であるという認識でお願いします。

使用するツールとデータ

まず使用するツールですが、いつもの通り TradingView を使用します。

また、使用するデータは、本当は王道である S&P500 のデータを使用したかったのですが、TradingView では S&P500 の過去データは月足のみしかなかったので、日足までデータが存在したNYダウ(ダウ工業株30種平均)を使用します。
TradingView ではティッカーコード「TVC:DJI」で取得できるものです。

なお、S&P500とダウ平均の相関係数を計算すると以下の通りでした。

  • 1915年~現在まで:0.998
  • 1915年~1955年の40年間:0.992

ですので、ほぼS&P500での積立投資のシミュレーションとして置き換えることが可能と思っています。

シミュレーション期間

積立投資の開始は、大恐慌が起きた1929年の年初からとしています。
また、積立期間はつみたてNISAと同じ20年間とします

使用する足

もろもろの理由により、週足を使用しています。

積立方法

週始めの始値で、100ドルずつ毎週定額購入積立することとします。
つまり、いわゆるドルコスト平均法です
(投信の積立購入のイメージが近いのかなと思います)

その他

  • 簡単のために今回のシミュレーションでは配当は含みません。
  • 為替は考慮しません。ドル建てです。
  • 物価変動は考慮していません。

検証結果

1929年1月から1948年12月まで、毎週100ドル積立のシミュレーションは以下のようになりました。(クリックで拡大します)

※ 画像に USDJPY の表記がありますが誤記です。

下段の背景緑色の領域がシミュレーション結果です。
黄色(右軸)が含み損益率を表しており、オレンジの線が最大ドローダウン率です。

結論から言うと、以下の通りとなりました。

  • 1932年(積立開始3年後)に、含み損が -72% になる(これが最大ドローダウン)
  • 1935年(積立開始6年後)には、いったん含み損が解消する
  • 1943年(積立開始14年後)までは、含み損益がプラス圏とマイナス圏をいったりきたりする
  • 1943年以降は、含み益を維持してプラス圏で安定する
  • 1948年末(積立開始20年後)には、含み益は +34% になる

なんと意外にも1935年にはいったんプラス圏に浮上しています。

しかし、そこから株価は10年以上もヨコヨコを続けているので、1943年になるまで14年間は含み損益がプラス圏とマイナス圏をいったりきたりしています。(ちなみにこの期間で-50%近くの暴落が起きていますので、実際はヨコヨコレベルじゃないボラティリティです🙄)
想像してみるとこれはメンタル的にかなりきついのではないかと思います。
人間は損することに異常にストレスを感じると言いますので、プラスマイナスゼロで手仕舞いたいという葛藤に打ち勝たないといけません。

また、最大ドローダウンが -72% というのが痛すぎます
何も覚悟していなかったら間違いなくメンタル破壊されそうです。

これらの苦行に15年間耐えると、そこからはある程度安定してプラス圏を維持することができたようで、結果として積立20年間で約1.34倍に資産を増やすことができたようです

考察

結果をもうちょっと深堀してみます。

まず、毎週100ドル積立でシミュレーションしているので、最大ドローダウン時にどういう状況であったかを確認します。

最大ドローダウン時の状況
  • 積立開始から:3年7か月経過
  • 購入額:18300 ドル
  • 含み損:-13240ドル
  • 含み損率:-72.2 %
  • 年率換算リターン:-30.0 %
  • 年率換算リスク:34.5 %

感覚としては、3年間一方的に含み損になり続ける中、毎週1万円ずつ投資して合計200万円をつぎ込み、150万円の含み損を抱えている状況です。
・・・気が狂いそうです。配当を加味していないとはいえ、この含み損では配当なんて気休め程度でしょう。
この状況では社会情勢も不安定で、おそらく家計も相当なダメージを受けているはずなので、よほどの覚悟がないと積立を継続できないのではないか?というのが個人的な印象です。

次に、20年後の積立終了時点での状況を確認してみます。

積立開始から20年経過時の状況
  • 積立開始から:20年経過
  • 購入額:135500 ドル
  • 含み益:+35602 ドル
  • 含み益率:+34.2 %
  • 年率換算リターン:1.48 %
  • 年率換算リスク:24.5 %
  • シャープレシオ:0.06

感覚としては、20年間で1400万円投資して、結果として400万円ほどのリターンを得れたという感じでしょうか。
最終的にはプラス圏で安定していますが、20年間で +34.2% というリターンをどうみるかですね。
年率換算で +1.48% リターンなので、配当を考慮していないとは言え、実質のインフレ率を加味すると、資産として果たしてプラスなのかは微妙な気がします。
少なくとも、米国10年債の利回りが2%以上で推移していたことから、債券投資のほうが資金効率は良かったと言えます。(まあ後出しなので何とでも言えますが)


出所: https://www.multpl.com/10-year-treasury-rate

まとめ

今回の検証で以下のことがわかりました。

1929年~1948年の20年間ドルコスト平均法積立投資の結果

  • 大恐慌時でも、20年以上ドルコスト平均法で積立投資した場合、最終リターンは+34%のプラスであった
  • ただし、その積立期間の最大ドローダウンは-72%であった
  • 含み益がプラス圏で安定するのは積立投資開始後14年経過後であった

以上より、まず大恐慌時においてもドルコスト平均法による積立投資というは有効であったと言えます。
ただし、ドローダウンが半端ないので、相当な覚悟か完全気絶しておく必要があると言えそうです。 また、最終リターンも+34%ということで、この苦労に見合う程度のものなのか微妙なところというのが個人的な印象です。

これを受けて私の今後の投資方針としては・・・

少なくとも、私自身は3年間一方的に下落し続ける中最大-72%の含み損に平気な顔をして耐えることはできないと思っています。
もちろんこのレベルの地獄相場が今後来るとは考えにくいと思っていますが、過去最悪の状況をイメージしておくことは非常に重要だと考えます。

そのため、よく言われることですが、基本的にはドルコスト平均法を行っていきますが、株式オンリーではなく、債券やゴールド等を含めてある程度分散させた積立投資を検討しています。(いわゆる効率的ポートフォリオ)
また、積立投資自体も、ドルコスト平均法ではなくもっと有効なやり方がないか模索してみます。(たとえば下落時に荷重投資するなど)

今後の課題

  • 配当込でのシミュレーション
  • 今回は物価変動を考慮していないので、物価変動を加味した相対リターンを検証してみる

また、直近の25年間と大恐慌時の積立投資シミュレーションの比較や、ボリンジャーバンド-2σ到達時に荷重投資するとか、騰落率や移動平均乖離率を用いた荷重投資などのシミュレーションもやってみたいと思います。

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